集まらずに集団実験

統計・資料

本記事は、Online Psychological Experiment Advent Calendar 2020 9日目の記事としてアップされたものです。

本記事の概要

タイトルの通り、物理的に集まらずに集団実験をするにはどうすればよいかを考えてみました。オンライン会議ツールZoomで実験をした話と、オンライン経済実験ツールoTreeの紹介を書きます。

Zoomで実験

修論を書くにあたり公共財ゲームを使った実験をしなければならなかったのですが、COVID-19の感染防止のために学生を実験室に呼んで実験を行うのは難しい。しかし、実際にしたことのある方はわかると思うのですが公共財ゲームなどの実験ゲームはルールを読んだだけで理解してもらうのが難しい。やはり口頭での説明はいるな…どうしようか…ということで、Zoomを使って実験しました。参加者は大学の授業内で募集しました。

イメージはこんな感じです。Zoomの画面共有機能を使いながら実験の説明を行い、質問をチャットで受け付けました。質問紙や実験ページへのリンクもチャットで送りました。
プライバシーに配慮し、参加者にはビデオおよびマイクを常時オフにしてもらうとともにお名前はこちらで一時的にランダムな文字列へ変更しました。
他の参加者に見えることなく一時的に名前を変更する方法を以下で紹介します。

名前の変更のしかた

今回は4名の参加者で同時に実験を行いました。実験の目的(匿名性が大事)からいってもプライバシーの観点からも参加者のお名前が他の人に見えてしまってはよくないので、ゼミの同期や後輩の協力のもと試行錯誤した結果、こうすれば参加者同士の名前が見えることなく実験できることがわかりました。(仕様は変わる可能性があります)

1. 時間になったら参加者に待機室に入ってもらう

待機室を有効にしておく必要があります。Zoomの仕様として待機室にいる間は誰がいるか見えません。

2. 一人ずつミーティングルームに呼んで名前を変更する

参加者ページ→詳細→名前の変更で名前を変更できます。

3. 変更したら一旦待機室に戻ってもらう

同じく参加者ページから、待機室に戻ってもらいます。
名前の変更は、待機室に戻ってもそのまま反映されます。

4. 全員に対して2、3を行う

5. 全員名前を変更できたら全員をミーティングルームに入れる

これで、全員の名前がこちらで変更した名前になった状態で皆がミーティングルームに入ることになります。勿論、ミーティングを終了すれば名前はもとに戻ります。

謝礼は?

Amazonギフトカード電子版をメールで送りました。1円単位で金額を指定できるため大変便利で、変動報酬制を採用する実験にピッタリだと思います。(規則的にNGという話はよく聞きますが…)

感想: メリットとデメリット

リアルタイムで口頭で説明し、チャットで質問もできることから完全にオンライン上で説明を読むだけよりはルールを理解してもらえたように感じました。
オンラインで行う実験全てにいえますが、実験環境を統制できないのがデメリットです。

オンライン経済実験ツールoTree

説明はZoomを使ってできても、オンライン上でアクセスするだけで動く実験プログラムがないと実験はできません。
そこで、ここからはオンライン経済実験ツールoTreeの紹介をします。
oTreeは無料で使うことができ、社会心理学、行動経済学、実験経済学などでよく行われる参加者同士で相互作用する実験を自由に作ることができます。

oTreeの基本構造

oTreeをインストールしプロジェクトとアプリケーションを作ると、自動的に必要なフォルダやファイルを作ってくれます。

アプリケーションがひとつひとつの実験課題や質問紙にあたり、複数の実験課題で実験全体(プロジェクト)を構成します。

自由に課題を作れる

元々囚人のジレンマゲーム、公共財ゲーム、最後通牒ゲーム、独裁者ゲームなどの多くの実験ゲームや簡単な質問紙が入っていてそのまま使うこともできますが、上図のModels、Templates、Pagesで様々な指定をすることで自由に実験課題や質問紙を作ることができます。
実際に課題を作ったコードをこちらの記事に載せているのでよかったらご覧ください。

Models


oTreeが得意とするのは、参加者同士で相互作用する実験課題です。勿論、性別や年齢、パーソナリティーをたずねる質問紙など、一人で行う課題も作れます。Modelsの中で、参加者一人ひとりに用意する選択肢や参加者同士でどんな相互作用をするかを指定できます。

Templates


htmlで参加者の画面に表示するページを作ります。
例えば公共財ゲームだったら「貢献額を決定するページ」「結果を表示するページ」の二枚が必要です。好きに図を入れたり、ボタンを配置したりできます。

Pages

ページの表示順序やページ遷移の仕方を指定します。
「全員が選択し終わってから結果のページに進んでね!」、
「ページ1を10秒表示したあとにページ2に自動で遷移、残り秒数も表示してね」など。

実験課題同士をつなぐ

通常、パーソナリティーの測定の後に実験ゲームをする、複数の実験ゲームを行う、など複数の実験課題をひとつの実験で行うと思います。
oTreeでは作った課題同士をつなぎ、ひとつの実験プロジェクトを作り上げます。データが一連の課題データがつながった状態のファイルで出力されるため、異なる課題のデータをつなぎ合わせる作業(ミスのもと)が必要ありません。
また、前の実験課題の結果を次の実験課題に反映させることもできるようです。例えば、公共財ゲームで多く投資した人半分を最後通牒ゲームの受け手に割り当てるといった操作が可能です。

oTreeを使ってみたい方へ

oTreeの導入や基本の課題の作り方についてはこちらの記事が大変わかりやすく、その通りにすれば簡単に導入できました。
https://github.com/akrgt/otree_2019KG

また、同じ方が書かれている記事でこちらも参考になります。

はじめに
2020年度東京工業大学「oTreeによるオンライン経済実験 セミナー(連続セミナー)」に関する資料です.

おわりに

本記事ではOnline Psychological Experiment Advent Calendar 2020企画の一つとして集団実験にスポットを当てました。最後になりましたが、このような素敵なご企画に参加をさせていただきありがとうございました。

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